元に戻る
  上水道のフッ素化は人道上認めがたい
         内科学教授フッ素化を激しく批判

                村上 徹


                      

 腎臓病学の権威者として知られる東京医科歯科大学内科学丸茂文昭教授は、2001年7月に東京で開催された第12回日本微量元素学会での講演において、厚労省が推進を表明した水道フッ素化について、腎臓病学者の立場から「人道上認めがたい」として厳しい批判を展開した。
 
 同教授は、既に1988年の時点で、フッ素の為害性はアルミニウムやバナジウムとともに検討されねばならぬ重要な問題であるという意見の講演をしており[1]、その後明らかになった環境ホルモンとしてのフッ化アルミニウムの為害性[2、3]について考えあわせると、彼の医学者としての先見性には驚くべきものがある。丸茂教授は同趣旨の論文をこれまでにもあまり人目につかない雑誌や英文として発表しておられるので、関連する情報を集めてここで紹介しておく。
 彼はこれらの発表のあと、フッ素の為害性やフッ素化の問題について、腎臓病学者の立場から壮大な総説を書く準備に没頭しておられたが、途中病に倒れ、現在療養中であると聞く。一日も早い回復を祈念してやまない。

さて、同教授の上記の講演の要旨は、次のとおりである。
           (第12回日本微量元素学会・講演プログラム抄録・2001年より)



水道水フッ素添加の動きと慢性腎不全患者の立場
               
                        丸茂文昭、岩波 茂
            東京医科歯科大学大学院体内環境調節学
            北里大学医療衛生学部放射線技術学科
 
[目的] う歯予防を目的にNaFを上水道に添加する行政が欧米においてみられる。これには、副作用を上廻る明らかな効果があるのかという議論と、その上水道を生活水とする市民全員にNaF摂取を強制されることにより被害をうける弱者がいないかという問題がある。後者の問題につき、腎臓病学の立場から検討を加える。

[方法] 慢性腎不全保存期非透析患者(CRF)14名、血液透析患者(HD)40名、対照健常者50名の血清及尿中F濃度を選択的イオン電極法で測定。血液透析患者11名、事故死等の腎臓に異状を認めない者9名の骨中、F、Ca含量を非破壊放射化分析法によって測定した。

[成績] CRF、HD、対照の血清F値の平均はそれぞれ46.4、28.2、7.92μg/l(村上注:μg/l=ppb=1/1000ppm)であり、CRF、HD、が有意に高値を示した。水道水中Fは53.1μg/lであった。腎のFクリアランスは、クレアチニンクリアランスと強い正の相関を示した。骨中F含量はHD平均464、対照44mg/lHDは約10倍の高値を示した。インドその他飲料水にFの混入の高い地域、工業労働者の産業F汚染地域では斑状歯、骨折、骨硬化症、骨形成異常等が見られ、4〜10ppmの飲料水F濃度をみる。上水道に1ppmFを添加している地域でも斑状歯、骨折の報告が少なくない。Fは殆ど尿中から排泄されるため、腎不全患者ではFが蓄積されるばかりである。そのFは骨に蓄積し、骨変化をもたらすことはF汚染地域の調査で明らかである。

従って、慢性腎不全患者では骨F蓄積による骨障害が起こりうる。

[結論] 上水道F添加は、Fを排泄しえない腎不全患者に骨障害の発症を強制する危険が十分にあり、上水道のフッ素化は人道上認めがたい問題である。
    
 

 この研究を、丸茂教授は、一般向けの雑誌である「食べもの通信」(No.363号、2001年5月)で次のように解説している。                   

  (略)体内に入ったフッ素の排泄は殆ど腎からで、私達の研究では、腎機能とフッ素の尿への排泄作用は強い負の相関をもつ(略)。つまり、腎機能が低下すると、フッ素が体内から排泄されにくくなることを示します。
 血清中のフッ素濃度を比較すると、正常対照者(n=50)では7.9ppbであるのに対し、慢性腎不全患者で透析を、また透析に至らない者(n=19)では33.6ppbと高値を示し、透析を受けている腎不全患者(n=20)では28.8ppbと、いずれの患者の血清フッ素も対照群に比べ有意る高値を示します(p<0.001)。
非透析患者は透析患者よりも有意な高値を示す(p<0.005)。これはフッ素の透析による除去率がよいので、透析患者のフッ素の一部が、透析のたびに排泄されているためかもしれません。
 血清透析患者と対照腎機能正常者の骨中フッ素含有量を測定した結果が、右下図です。対照群44μg/gに対し、血液透析者では464μg/gと、10倍の濃度でフッ素が骨に蓄積しています。本邦は水道水がフッ素化されていないので水道水中フッ素濃度は42.5ppbでした。もし、フッ素化されて1ppm(村上注:1000ppb)の水道水を腎不全患者が使用を強制されたら、骨中フッ素はさらに上昇し、骨折等の変化が現れることは間違いないでしょう。



 
 健常者のみの立場で上水道をフッ素化することは、腎不全患者のような社会的弱者を軽視するものであり、腎臓病学を専門とする医師として看過できない問題です。      


                                                       丸茂教授がフッ素量を測定した非破壊放射化分析法とは、現在の微量元素分析技術では最も正確な手段といわれており、この手段で骨中のフッ素量を測定した論文に接するのは、私は初めてである。

 ここで思い合わされるのは、かつてドイツでフッ素化問題が惹起した時に発行された「飲料水フッ素化の問題に対する証明記録」(ドイツ・ガス・水道協会)[4]という論文である。この論文は、当時西ドイツで試験的に行っていたカッセル市でのフッ素化実験を総括するために発表されたものであるが、フッ素化に伴うあらゆる問題を真っ正面からとりあげて忌憚なく論評し、水道フッ素化という保健施策を根底から否定した。このためドイツはそれ以後フッ素化政策とは絶縁し、今日にいたるまで、フッ素は二度と問題にさえならない。東独の一部で実施されていたフッ素化も、統一後全廃された。
 そういう意味でこの論文は、ヨーロッパ各国の政策をリードした記念碑的な論文であるが、その中で、フッ素化水で血液透析を行ったために死亡した実に気の毒な症例やいくつかの医療事故に言及している。
 その死亡例とは、15回目の透析の後に死亡した患者の場合であるが、その患者の骨中には、何と5500ppmものフッ素が蓄積していたという。
そして、これらを勘案してこの証明記録は「これらの出来事から結論できることは、フッ素化物の集団投薬、特に強制的な飲料水フッ素化においては、すべての腎障害者と50才以上の人々は除外されねばならないということであろう。もちろんこのことは実際には不可能である。」
と述べ、だからこそ、フッ素化などは止めるべきだと結論したのである。

 この論文が公表されたのは1975年であるが、その時点においてすら「フッ素化の拒否理由は実験的にも臨床的にも十分根拠づけられているのである」と述べているのである。その後30年近く経過して、フッ素の害作用に関する医学的証拠は、当時とは比較にもならぬくらい山積している。そのため、フッ素化の本場であるアメリカやカナダでも住民の拒否にであってフッ素化を取り止める自治体が続出し、(参照)フッ素化政策の根本がグラグラ揺れ出しているのが現況なのである。
 ヨーロッパでフッ素化なんてバカな政策をとっている国は今やアイルランドただ一国である。そのアイルランドも被害が続出してフッ素化反対闘争が激化し、第二党がフッ素化廃止を公約にかかげるまでになって、今やフッ素問題は政党間の争いにまでなっているのである(参照)。そんな情報を国民に知らせることもせず、いい事づくめの文句を並べたて、いかにもフッ素化が先進国の保健政策であるかのような宣伝に狂奔する一部の予防歯科学者や歯科医らは、まさにフッ素イデオロギーの狂信の徒といわねばならない。そしてこの徒輩の手にとりこまれて愚かな社説などでフッ素化の旗ふりを演じている読売新聞などは、ジャーナリズムの名にも価しない存在である。戦中に大本営の方針に盲従して国民を戦争にかりたてた悲惨なキャンペーンを思い出す。
消費者はだまされぬように極力注意すべきだ。


             文献

1 丸茂文昭 微量元素と医原性疾患・フッ素研究第9号・pp.1-2・1988
2 Varner, J.A.et al (1998). Chronic Administration of Aluminum-Fluoride and Sodium-Fluoride to Rats in Drinking Water: Alterations in Neuronal and Cerebrovascular Integrity. Brain Research, 784, 284-298
3 ポール・コネット(村上 徹訳) フッ素を憂慮する・フッ素研究第19号・p.28・.2000 http://members.jcom.home.ne.jp/tomura/page.yuryo4.htm
4 飲料水フッ素化のための証明記録・フッ素研究第2号・pp.20-21 1981
5 Marumo F,Iwanami S, High Fluoride Concentration in the serum and Bone of Patients with Chronic Renal Failure. The XXIVth Conference of the International Society for Fluoride Research, Program and Abstract.p.35.2001              

                 ホーム・ページに戻る.