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基調講演1 

水道水フッ化物濃度の適正化

  

             長崎大学医学部長 斎 藤 寛

 

ただ今ご紹介いただきました長崎大学医学部長の斎藤です。

今日基調講演ということでお話をする機会を与えていただきました。本日はフッ素とはどういうものかという事と、それから水道水のフッ化物の濃度を適正化するとはどういうことか、どこから始まって、そして現在どのようであるか、水道水のフッ化物濃度適正化が、なぜこの久米島で始めなければならないのかということについて私の考えを述べたいと思っています。

 先ず第一にフッ素という元素は、私どもの人間の体の中に、酸素とか炭素とかカルシウムとかマグネシウムとかたくさんの元素がありますが、フッ素というのは人間の体の中には14番目に量の多い元素であります。

 生命の維持に欠くことのできない元素を必須元素といいます。酸素、カルシウム、リン、ナトリウム、ヨウ素、亜鉛など20種ほどが判っていて、フッ素もそのーつです。

 フッ素は身近な元素で、例えば、海水に1.3ppm含まれていますが、これは海水含有元素量としては14番目です。ヒト体内存在量も14番目で約3グラムです。

 フッ素は結合組織および骨の形成に必須ですが、むし歯予防のために飲料水や歯磨剤にも添加されています。

 フッ素とむし歯の関わりが知られたのは今世紀初頭のことです。1901年に米国検疫官のエィガー博士がナポリ周辺からの移民には歯が褐色(斑状歯)の人が多いことを報告しました。

 米国でも斑状歯の多発地域のあることが報告され、深井戸を水源とする公共水道に関連すること、また、斑状歯にはむし歯の少ないことが明らかになりました。

 1930年代に入って飲料水中のフッ素濃度と斑状歯およびむし歯に関する大規模な疫学調査が米国公衆衛生局のディーン博士らによって行われました。

飲料水フッ素濃度が様々に異なる地域間で住民の斑状歯やむし歯の状態を比較検討したのです。

 飲料水中のフッ素濃度が上昇するにつれてむし歯が減少すること、それとともに斑状歯が増加することが明白にされました。そして、科学者の合議の結果、フッ素によるむし歯予防の有益性と斑状歯 (歯フッ素症) 発生率とのバランスを考えると、むし歯予防に最適なフッ素濃度は0.7 1.2ppmとされました。

 この成績をもとに、1945年に米国ミシガン州グランドラピッツ市がむし歯予防のために上水道フッ素濃度がlppmとなるようにフッ素を添加した世界最初の都市となり、先年、フッ素添加50周年を盛大に祝いました。この方法は欧米では水道水殺菌法、予防接種などとならぶ偉大な公衆衛生学的疾病予防法と評価されています。

 そして、世界中に上水道フッ素添加が普及して、現在、三億人を超える人々がフッ素添加水道水を飲用しているのです。

 1997年に長崎で開催された第21回むし歯予防全国大会で米国立衛生研究所ホロウッツ博士は、米国では上水道フッ化物添加地域人口が給水人口の62%にあたること、むし歯予防率は60%、フッ化物添加の費用は一人一年当たり50セントであると述べました。

 12歳児のむし歯数は歯科保健水準国際比較の指標ですが、わが国は一人3.9 本で、世界ワースト5に入ります。皆さんよくご存じのように歯の喪失の最大の原因はむし歯です。

 1969年に世界保健機関(WHO)はむし歯の予防手段として水道水フッ素添加の安全性が国際専門機関で承認されたことをふまえ、「水その他の源泉からの弗化物

 (フッ素) 摂取量が公衆衛生上立証された最適水準に達していない場合は水道供給事業に弗素添加を導入する可能性を検討し、実行可能な場合にはこれを導入すること」と加盟各国に勧告しましたが、わが国ではまったく導入されていません。むし歯予防の効果と安全性が証明されている水道水フッ化物濃度適正化の実現が望まれます。

 現在、一番楽しみである自分の好きなものをゆっくり噛んで味わって食べられないという老人が沢山います。

 フッ素あるいはフッ化物というものは、水に存在していて、人間にとって最も大切なもので、それがなくては命がもたない元素で毒物ではありません。

 もう一つは科学的な根拠でもってむし歯の予防が証明され、水道のフッ化物濃度を適正にして供給して50年の歴史がります。

 癌であるとか感染症であるとか、あるいは知能とか人間の健康に関わる全ての他の事象と比較した時に、フッ素濃度適正化の地域に暮らしていた人とそうでない地域の人に全く違いがない。このように50年の歴史があることに、フッ素濃度適正化に反対する人たちがどうして反対するのか疑問でならないのでございます。

 もう一つ申し上げたいことがあります。私は沖縄県の人々に大変な敬意を持っております。何故か、それは沖縄県が日本で一番長寿の県であるということです。

 私たちは皆んな長生きしたい、健康でいたいと思っていることは世界共通でありますが、どうしたら長生き出来るか、そうして最後には家族に見取られて病気少なくて長生き出来るか。

 どうしたらできるのか、それは、2000年か3000年か分りませんけれど、この沖縄の皆さんの先祖が、ずっと毎日毎日の暮らしに徴候があるわけでして、私たち1億3千万人の日本人が沖縄県の皆さんを学ぶことによって長生き出来る。

 この沖縄から日本にいや世界中に発信されているところのその情報ですね。沖縄県の人々が日本で一番長生きしていて元気だという情報が一兆円でしたか、日本で1番お金持ちで税金を納め、世界中に車を輸出して日本の財政に貢献しているトヨタの何兆倍かも分かりません。

 そうだからこそ私は健康については沖縄に学べと、ここでこれだけ長生きする健康というものを大事にする。そこでもう一つフロリデーシンというものを取り入れていただいて、ここから日本中にむし歯がなくて暮らせるよと、そのことが与えてくれている恩恵、沖縄復帰以来誤解を与えるといけませんのでいいますが、私も長崎県におりまして離島に多くの人が住んでいまして相談されますが、離島振興法を含め様々の形で政策を行っていますが、最近我々の納めた税金を、もっと都市に、もう少し大勢の人のいる所に金を出せ、人のいない離島には金はいらないのではないかといった話がありまして、医師とか保健婦といった保健に関するマンパワーの数にも影響してきます。

 その時に長生きをしているとそのことが何にも勝る情報あるいは貢献、国に対して貢献であり、もう一つフロリデーションによる貢献によって、久米島の名前は100年1000年の後まで、そして初めて特に水道水のフッ化物濃度の適正化というのは法律で決めるものではなく、今までやってきた予防接種とか予防注射は法律で決めてお上が決めてやりました。

 しかし、水道水の問題は市町村単位でそこに住んでいる人が選択するということですから、やはりここは皆様に先陣を切っていただいて、そして、なるほど沖縄は立派な人なんだなー、賢い人なので健康を指向して、そして素晴らしい適切な判断でフロリデーションを導入する効果、そのことが及ぼす効果、健康日本人全体の健康に及ぼす貢献度合は、過去のいかなる日本のいかなる地域、いかなる対策、いかなる貢献よりも私は高いと私は思っています。

 御静聴ありがとうございました。

 


 

講演者プロフィール

  齋藤  寛  (さいとうひろし) HIROSHI SAITO ,MD,PhD.

  ・昭和12(1937)年1月5日生まれ

  ・昭和38年3月  東北大学医学部卒業

  ・昭和43年3月  東北大学大学院医学研究科博士課程 修了(医学博士)

  ・昭和43年4月  束北大学医学部附属病院副手(医学部第二内科)

  ・昭和45年1月  東北大学助手(医学部第二内科)

  ・昭和53年8月  環境庁国立公害研究所環境保健部室長

  ・昭和5812月  長崎大学教授(医学部衛生学)

  ・平成1010月  長崎大学医学部長(現在に至る)

 学会活動:

  ・環境庁イタイイタイ病研究班委員 (昭和49年〜現在)

  ・日本腎臓学会評議員、日本衛生学会評議員、日本公衆衛生学会評議員など

 社会活動:

  ・長崎県建築審査会委員、長崎県医療審議会委員など

平成3〜4年の21日間、毎週金曜日午後7時〜7時30分テレビ長崎ト

 ーク

   生番組の「アダム&イブニング」のキャスターを勤める

平成1011月から長崎新聞にコラム「大学の窓から」を連載し、大学、 

 研究、健康などのエッセイを発表し現在に至る