元に戻る

未成年者の喫煙防止、CMでの呼びかけは逆効果?2006年11月1日

「未成年者にたばこを吸わないよう言い聞かせなさい」と親たちにうるさく訴えかけるテレビコマーシャルは、子供たちにひどく煙たがられているようだ。American Journal of Public Health誌が掲載する予定の論文が、この問題を取り上げている。それどころか、子供たちが喫煙習慣を身につけさせるきっかけになっているかもしれないという。
論文の執筆者たちも「こうしたCMは喫煙の促進を意図してつくられた」とまでは述べていない。だが、子供への良い影響はまったくないというのがその主張だ。
執筆者は、心理学、社会学、経済学などの博士号を持つ9人の研究チーム。論文は、喫煙防止を目的としたCMが未成年者に与える影響を調査した結果に基づいて書かれた。調査対象となったCMは、米Altria Group傘下のPhilip Morris USAと米Loews Carolina Group傘下のLorillard Tobacco(ノースカロライナ州グリーンズボロ)がつくらせたものだ。調査費用を提供したのは、米国立がん研究所、米国立薬物乱用研究所、健康問題に取り組むRobert Wood Johnson Foundation。いずれもたばこメーカーに対して批判的な姿勢であることは間違いない。
Philip Morrisの広報担当者は、「当社で調べたところ、この論文の結論を裏づけるものは何も出てこなかった」と反論している。
論文がAmerican Journal of Public Health誌に掲載されるのはまだ先だが、すでに米国がん協会が公表している。がん協会の1部門、がん対策協会(Cancer Action Society)の責任者を務めるJohn R. Seffrin氏は、「健康関連の政策をつくるのも、喫煙について子供に教えるのも、たばこ業界の役割ではない。それをはっきりさせておく必要がある」と主張する。「子供が(たばこについて)見聞きするのは歴史の本の中だけでいい」論文によると、Philip Morrisは1998年12月に1億ドルを投じ、10〜14歳を対象にしたCMキャンペーンを全米で展開した。伝えようとするメッセージは、「よく考えて。そして吸わないで」だった。同社は翌年になってターゲットを親に変え、喫煙の害について子供に話すよう呼びかけるCMをいくつもつくった。今度のメッセージは、「子供と話してください。きっと聞いてくれるでしょう」というものだった。
1999年10月には、Lorillardが未成年者を対象とするキャンペーンに1300万ドルを投入し、「もしあなたが10代なら、たばこを吸うなんてばかだよ」と訴えた。
こうしたCMは、米国では2003年にすべて打ち切りとなったが、まだ放映している国もある。
調査は、喫煙に関する一連の広告の効果と、米国内の学校に通う生徒たちの意識が調べた。結果は特に意外なものではなく、米国の75もの放送区域でリビングルームに届けられたメッセージより、友人からのプレッシャーの方が大きな影響力を持つと分かった。
「青少年は大人に近づくにつれ、自分のことを自立した人間と考えるようになる。そして親の手引きや助けに頼っているとは公言しなくなる」と、論文には書かれている。
さらに論文によれば、未成年者本人を対象にしたCMは喫煙行動にまったく影響を与えなかった。一方、親をターゲットにしたCMは、それを見た子供を喫煙に駆り立てる傾向があったという。
Philip Morrisは6月に実施した自社の調査を引き合いに出し、今回の論文に異議を唱えている。10〜17歳の子供を持つ親を対象に調べたところ、喫煙防止を目的としたCMを見たことがある人は61%で、そのうち61%が喫煙について子供と話をしたという。同社はさらに、広告を出す場合は必ず「量と質の両方で」十分な事前調査を実施し、未成年者の喫煙を促進しないこと、防止できることを確認していると主張する。「子供がたばこを吸うかどうかを決めるとき、親以上に大きな影響を及ぼすものはない。それは確かだ」と、Philip Morrisの広報担当者は言う。「61%の親があの広告を覚えていると言い、そのうち61%が何らかの行動を起こしたと答えた…そこに広告を出した意味がある」